スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
医師、看護師、薬剤師の方の転職に関する情報を発信していきます。
(『医療の限界』 PP.3-4)
いま、日本の医療は危機に瀕しています。
不確実なことをそのまま受け入れる大人の
余裕と諦観が失われました。このため、
本邦では医療のみならず、専門家と非専門家
の齟齬(そご)が、社会の正常で円滑な運営
の障害になっています。本書では、社会を
支える基本的な考え方についての齟齬を、
可能な限り偏見から自由になる努力をしつつ、
凝視したいと思います。一部の方は不愉快に
思われるかもしれませんが、その際には、
不愉快の根源をどうかお考えいただきたい。
(上掲書、以下同様 P.5)
日本の医療を守っていくためには、医療提供側
の努力だけではなく、患者、司法、メディアなど、
社会の側にも医療に対する認識を変更してもらう
必要があると感じました。
(P.7)
東京地検に出向いて議論もしたし、その後、
検察官が医療現場の実情を現場で見学する
ようになりました。検察が様々な分野の
専門家や、ヒューマン・ファクター工学の
専門家のレクチャーを聴くようになりました。
これは、各専門分野と検察の相互理解、
ひいては、過失犯罪に対する検察の合理的な
対応にむけての、意味のある進展だと
思います。
(P.8)
私は医療崩壊の原因は患者との軋轢(あつれき)
だと思います。使命感を抱く医師や看護師が
現場を離れつつある。
このまま事態が進んでいくと、結果的に困る
のは医療を必要とする患者とその家族です。
(PP.148-149) (註:赤文字は藤巻 以下同様)
日本の医療現場の労働環境は非常に過酷
なのです。厚生労働省による診療報酬
体系の改定で在院日数が短縮化されたため、
私の勤めている虎の門病院のような急性期
病院が全体的にICU(集中治療室)化
しています。病棟ではさまざまなアラーム音
が頻繁に鳴り響いている。私が主として利用
している病棟(病床数56)では、患者を
手術室に運び、また迎えにいくといった作業
だけで1日10往復を超えることもあります。
医療行為の瑕疵を問われないようにするため、
手続きが複雑化しています。手術室で患者を
受け渡す際には確認事項が多く、33項目の
チェックリストがある。これだけで長時間の
労力が要る。もちろん他の入院患者にも手が
かかるし、随時、記録を残さなければいけない。
(P.149)
ICUというのは重症で手間のかかる患者を
治療する病棟ですから、通常の病棟よりも
多数の看護師が配置されている。
通常の病棟のICU化とは、看護師の労働が過酷
になっているのに、それに見合った形での増員は
なされていないことを意味します。
こうした病棟では深夜勤務がとくに危ない。
看護師2人で30~50名の患者を管理しな
ければなりません。これは危険なことです。
例えば、人工呼吸器はちょっとしたことで
不具合が生じやすく、不具合が10分以上
続くと、重大な被害が発生します。
人工呼吸器を装着している患者がいると、
人手さえあれば、起きないはずの事故が
起きるのは当然のことです。
(PP.149-150)
いったん事故が起きると、患者の家族は人員
配置やコストの問題ではなく、あくまで善悪の
問題としてとらえます。しばしば看護師を処罰
することを求め、賠償金を要求します。
もし院長が安易に患者の立場に立ってしまう
ようだと、看護師の士気は落ち、大量辞職も
起こりかねません。
(P.150)
医療の崩壊が現実のものとして危惧されるなか、
06年4月の診療報酬改定では、物価上昇傾向
の中でマイナス3.16パーセントという史上
最大規模の医療費削減が実施されました。
日本の医療費は、80年代前半以降世界に例を
見ない抑制政策が取られ続け、さらに強化されて
います。
アメリカの自己破産の6割は医療費が原因…。
アメリカの自己破産の6割は高額な医療費が原因!
もちろんアメリカにも国が運営する健康保険
はありますが、加入できるのは高齢者と
低所得者だけ。それ以外の人は勤務先などを
通じて民間の医療保険を契約しますが、
2008年時点で何の保険にも入っていない
無保険者が全米に4570万人もいました。
アメリカで自己破産した人の6割以上は医療費
が原因。ですが、そのうちの8割以上が民間の
医療保険に加入していたというから驚きです。
(オバマ大統領は)一応の改革は行ったものの、
民間の医療保険の加入を義務付け、その保険料
を税金で補助することにしただけです。
アメリカではますます医療破産が増えるので
ないかと危惧されています。
(PP.185-186)
大井(玄、東京大学国際保健学元教授)氏は、
職場は戦場であり、常に、競争、喧嘩、敗北
を意識しながらの生活だったと書いています。
病院では、競争の残酷な結果、すなわち、
金持ちと貧乏人に対する極端な扱いの差を
目撃しました。
大井氏は、日本に帰国して、数年後、寝たきり
老人や認知症の老人の宅診事業を始めたとき、
診療後、自分が、決まって急性反応性うつ状態
になることに恐怖狼狽しました。その根底には、
能力を失い他人に依存すること、他者に自尊心
を傷つけられること、自我が崩壊していくこと
に対する恐怖がありました。彼の若い同僚たち
にはそうした反応は起きませんでした。
大井氏は、その原因を、「アメリカという本物
の競争社会に生活し、競争の苛酷さを目撃した
から」と分析しています。
(PP.187-188)
大井氏は、ハーバード大学から東大に修士論文を
書くためにきていた女子院生が、逆のカルチャー
ショックを受けていたのを目撃しました。とくに、
大学院生がお互いに助け合って仕事をしていること
に、彼女は、倫理的怒りを含む衝撃を受けました。
「『信じられないわ。ハーバードではだれもが他の
だれとも競争しているのに!』」
彼女にとって同僚とは、すなわち競争相手であり、
自分が成功するためには打ち負かすべき対象であり、
決してアイデアを提供して実質的援助をおこなったり、
自分が独創性あると考える着想を共有する者では
なかった。
日本人は、はたして、市場原理主義が求める徹底
した個人間の競争に耐えられるでしょうか。
市場原理主義は、宗教を背景にしており、歴史的、
倫理的に日本人にはなじみのないものです。
Author:医師看護師薬剤師の味方
藤巻 隆(ふじまき・たかし)と申します。
私のメインサイト 本当に役に立つビジネス書 をご覧になったことがあるかもしれません。
今年2013年4月16日で、立ち上げてから12年目を迎えます。
今度は、医師、看護師、薬剤師の方の転職を支援するためにブログを立ち上げました。
より条件の良い職場に移りたいとお考えの方は、一般企業に務められている方も、医師、看護師、薬剤師の方も同じです。
さらに、医学に関するいろいろな情報を掲載し、ブログ閲覧者に資することを目指します。
建設的なコメントを希望していますが、有益なコメントであれば、厳しいご意見もお受けします。
あなたとともに私も成長し、このブログが定評を得るようになれば、パーソナル・ブランディング(自分ブランド力)を高めることができます。
どうぞよろしくお願いします。